大落下研究院
大落下の原因究明と再発防止を目的とする両陣営共同の学術機関
最初の橋渡しから100年後、天蓋議会と根の国連合が合意して設立した唯一の共同機関。大落下の原因解明と再発防止のための研究を行う学術・研究機関で、ラクエンに本部を置き、フワレイ・アーカイブスと根の都ネノカの近傍に分院を持つ。
構成員は両陣営から派遣される学者・技術者で、政治的立場を超えた情報共有が制度的に保証されている。この保証は両政府が署名した「研究院憲章」に明記されており、どちらの政府も研究員を政治目的で呼び戻すことができない。これがアエテリアで唯一、両陣営の人間が対等に働く空間を生み出している。
主な研究テーマはエーテル浮力の法則の精密計測、第一均衡の崩壊の再現実験、そして現在のエーテル石の残存量の推算だ。研究院が「現在のエーテル石の消費ペースが続けば150年以内に第二の大落下が起きる」という報告書を発表したことで、両政府の間に深刻な緊張が走った。
天蓋議会はこの報告を隠蔽しようとしたが、研究院の学者が根の国連合経由で公開したため大きな外交摩擦になった。以来、研究院は「真実を語る機関」として民衆の信頼を集める一方、両政府にとって扱いにくい存在となっている。
大落下研究院の内部は決して一枚岩ではない。「予防派」は今すぐエーテル石の採掘を制限して第二の大落下を回避すべきだと主張する。「観察派」はまず正確なデータを集めてから介入方法を決定すべきだと主張する。「受容派」は大落下は不可避であり、落下後の世界で両文明が共存できる準備をすべきだと主張する。この三派の対立が研究院の意思決定を複雑にしており、重要な報告書が数年間委員会審議で滞ることもある。
研究院の若手研究者たちは「第四の道」を模索している。大落下を防ぐのでも受け入れるのでもなく、大落下そのものを「制御された形で起こす」という発想だ。天蓋諸島を一度に落とすのではなく、島を少しずつ、段階的に地上に降ろしていく——この「管理された着陸」計画は理論上は可能だが、天蓋議会の政治的抵抗と、根の国連合が「空からものが降ってくる」状況に同意するかという問題が立ちはだかる。