エーテル鷲
天蓋諸島で飼い慣らされた、エーテル粒子を体内に持つ巨大な飛行猛禽
テンパイ・アイランズに古くから生息する猛禽の一種で、体内の気囊にエーテル粒子を蓄積することで飛行能力を大幅に強化した種だ。翼開張が3〜4メートルに達する個体もおり、馬に相当する重量を運搬できる。
野生個体は霧の海周辺を回遊しており、エーテル粒子の豊富な空域を好む。天蓋議会は数百年前からエーテル鷲の選択的繁殖を行っており、現在の飼育個体は野生種と比べて浮力が高く、人に対して温順な性質を持つように品種改良されている。
主に貴族や政府高官の移動手段として使われるが、緊急通信の伝令にも用いられる。エーテル石が枯渇すると飼育個体でも野生の本能が戻り攻撃的になるため、定期的なエーテル粒子の給餌が必要だ。これが「エーテル鷲の維持コストは飛行船より高い」と言われる理由だ。
根の国では「天の獣」と呼んで敬遠されており、エーテル鷲を使った監視活動や領空侵犯をめぐる外交問題は絶えない。根の国連合は「天の獣が地に降りたとき、世界は終わる」という古い言い伝えを持ち、飼育個体の地上への着陸を正式に禁止するよう求めている。
エーテル鷲の品種改良プログラムは天蓋議会の最高機密のひとつだ。現在の飼育個体は3系統に分かれており、「宮廷鷲」(移動用、最も温順)、「伝令鷲」(速度特化)、「戦鷲」(攻撃力特化)がある。戦鷲の存在は公式には否定されているが、過去の軍事的衝突での目撃証言が複数ある。
興味深いことに、エーテル鷲はシモベに対して特別な反応を示す。通常の天蓋人や根の国民には攻撃的になることがある戦鷲でさえ、シモベの前では静かになる。シモベが「中空の守り手」と自称する根拠のひとつに、エーテル鷲がシモベを「同じ空の者」として認識しているという観察がある。
野生のエーテル鷲は大落下の予兆に敏感で、下層島で霧が異常発生する前日に大規模な移動が観測されることがある。天蓋諸島の一部の漁師はエーテル鷲の動きを天気予報として使っており、「鷲が上層へ逃げれば霧が来る」という経験則は数世代にわたって伝えられている。