鷲乗り組合(ワシノリクミアイ)
エーテル鷲と生涯を共にする天蓋諸島の飛行者集団。輸送と防衛の要
一羽と一人
鷲乗りは、生まれたばかりのエーテル鷲と一対一で育ち、生涯その一羽としか飛ばない。エーテル鷲は精神的に結びついた者以外を背に乗せず、鷲乗りが死ねば、鷲は二度と誰も乗せることなく老いていくとされる。この絆の性質上、鷲乗りの数は組合が意図的に増やせるものではなく、卵が孵り、雛が特定の人間を受け入れるかどうかという偶然に左右される。
天蓋議会に従わない組合
鷲乗り組合は天蓋議会の傘下にはなく、独自の互助組織として運営されている。風の橋が政治的に閉ざされたときでも、鷲乗りだけは緊急物資と人を運び続けてきた歴史があり、両陣営とも組合には手を出せない。石蝶のような上層島の権力者たちも、鷲乗りの独立を黙認せざるを得ない——鷲乗りを敵に回せば、天蓋議会自身が緊急時の輸送手段を失うことになるからだ。
下層島との結びつき
鷲の卵は上層島では孵らないという言い伝えがあり、鷲乗りの多くは空風待のような下層島出身者で占められている。この出自の偏りが、鷲乗り組合を天蓋議会の寡頭制から距離を置かせる一因になっている。組合の内部では出自による序列がほとんど機能せず、鷲との結びつきだけが評価基準になる点も、上層島中心の天蓋社会とは対照的だ。
鷲が老いて死ぬとき
鷲乗りより鷲が先に老いることは稀だが、実際に起きたとき、鷲乗りは「見送りの儀」と呼ばれる慣習に従う。鷲を看取った者は、以後二度と別の鷲と絆を結ぼうとせず、組合内で若い鷲乗りの指導役に回る。逆に鷲乗りが先に死んだ場合、遺された鷲は誰にも心を開かず、やがて中空のどこかへ飛び去って戻らないことが多いという。組合はこれを「最後の忠義」と呼び、鷲を追って連れ戻そうとはしない。
鷲の選び方という誤解
外部の者はしばしば「どの鷲を選ぶか」を鷲乗りが決めると誤解するが、組合内では逆に語られる——選ぶのは常に鷲の側だ。生まれたばかりの雛の周りに志願者を集める「対面の儀」では、雛が誰にも近寄らず群れの外に留まることも珍しくなく、その場合は翌年まで儀式が持ち越される。組合の古参は「鷲を急かした者に、良い絆が結ばれた例はない」と口を揃える。