天蓋諸島(テンパイ・アイランズ)
エーテル石の浮力で空に浮かぶ都市群。12の主要島と無数の小島で構成される。最大の島「中天島」に議会と大図書館がある。

天蓋諸島は、かつて大陸が引き裂かれた際に空へ昇った岩盤と土壌が、地中のエーテル石の浮力によって大気圏内に固定された巨大な浮遊列島である。
12の主要島はそれぞれ独自の気候と文化を持ち、島間を結ぶ「風の橋」——エーテル石を動力とする空中回廊——によって往来が可能になっている。最も大きな中天島は政治と学問の中心であり、議会堂と「万象の図書館」が置かれている。
各島は浮遊高度によって「上層」「中層」「下層」に分類され、上層ほど空気が薄く日差しが強いが、エーテル石の純度が高い。下層は根の国に近く、交易の窓口として機能する一方で、下層民は「地面に近い者」として差別の対象になることもある。
大落下以前、天蓋諸島は単一の大陸の隆起部分にすぎなかった。第一均衡の崩壊によってエーテル石の浮力が臨界点を超えた瞬間、大地は引き裂かれ、上部の岩盤が天空へと押し上げられた。現在でも天蓋諸島の崖面には、かつて地続きだった証拠である地層の断面が露出しており、地質学者はこれを「離別の傷跡」と呼ぶ。
12の主要島のうち最上層に位置する天極島は年間を通じて雲の上にあり、ここで生まれ育った者は根の国の存在を感覚的に理解することが難しい。これが天蓋議会の閉鎖性の一因となっている。一方、最下層の霞境島は霧の海のすぐ上に位置し、シモベとの非公式な交流が日常的に行われる。島の市場では根の国産の菌糸料理や菌糸銀が密かに流通し、天蓋議会の禁令は形骸化している。
エーテル石の産出量が年々減少しており、下層島の一部では過去10年で高度が数メートル低下した観測記録がある。天蓋議会は公式には否定しているが、中天島の議事録には「浮力維持費の増大」という項目が繰り返し登場する。大落下研究院の試算より早く第二の大落下が訪れるという懸念が、天蓋の民の間で静かに広がっている。
天蓋諸島の子どもたちは空以外を知らずに育つ。下を見れば霧の海があり、上を見れば無限の空がある。根の国が存在することは学ぶが、大地の感触を知る者は極めて少ない。この感覚的な断絶が、天蓋議会の閉鎖的な世界観を再生産し続けている。
Related elements
- 天空交易都市ラクエン— 天蓋諸島の商業中心として栄える巨大な空中交易都市
- 根の国(ネノクニ)— 光の届かない大地に広がる地下文明。巨大な菌糸ネットワーク「大地の記憶」を通じて情報と生命力を共有する。
- 根の都ネノカ— 根の国の最深部に広がる、菌糸に包まれた地下の聖都
- 浮遊廃墟群(フワレイ・アーカイブス)— 大落下で崩壊した古都市の断片が霧の海に漂う遺跡群
- 霧の海(カスミノウミ)— 天蓋諸島と根の国の間に広がる境界層の霧の海