根の国連合
根の国の七つの大洞窟都市による連合体。菌糸ネットワークを通じた直接民主制に近い合意形成を行う。

根の国連合は、地下に広がる七つの大洞窟都市——深淵都、苔光都、菌房都、石脈都、地泉都、暗渠都、根底都——の連合体である。
統治形態は天蓋議会と大きく異なり、大地の記憶を通じた「菌糸投票」によって主要な決定が行われる。市民は菌糸に接触し、賛否の感情を伝送する。この方式は極めて民主的だが、菌糸の感情伝達は完全に正確ではなく、「集合感情のノイズ」が結果を歪めることがあるとされる。
天蓋諸島との関係は、交易と不信の混合物である。根の国はエーテル石の供給を天蓋諸島に依存し、天蓋諸島は根の国の食糧(菌糸農業による高栄養食品)に依存している。この相互依存が、両者の衝突を最終的に抑止している。
根の国連合を実質的に方向付けるのは、七つの都市の長老たちで構成される「深議会」だ。この機関は菌糸投票の結果を「解釈」する権限を持ち、集合感情のノイズを補正するという名目で実質的に意思決定の最終権限を握っている。民主的な外観と寡頭的な実態のギャップが、根の国連合の最大の内部矛盾だ。
菌糸共生族との関係は微妙だ。彼らは根の国連合の構成員ではなく「深の者」として別格の扱いを受けるが、菌糸の掟の最終解釈権を持つため、深議会といえども彼らの判断を覆すことはできない。これを不当な権限集中と見る都市の長老もいる。
大落下の予兆が顕在化してから、根の国連合内では「防衛派」と「協調派」の対立が激化している。防衛派は天蓋諸島の落下を根の国への直接的な脅威として捉え、大落下に備えた軍事的準備を求める。協調派は大落下を両文明が協力して解決すべき共通問題と捉え、大落下研究院への全面支援を主張する。この対立は、菌糸投票でも結論が出ないほど拮抗している。
大落下研究院との協力関係は、根の国連合内部の対立軸のひとつだ。研究院に情報を渡しすぎれば天蓋議会に利用される、という警戒感は根強い。しかし大落下が現実の脅威である以上、情報封鎖が自陣営の存亡をも危うくするという矛盾を、根の国連合は抱え続けている。